田舎役場職員の遠吠え

Almost anything you do will be insignificant, but you must do it.

町長とフセイン大統領の首脳会談

前に副町長のことを書いたついでに、といえば失礼ですが、以前に亡くなられた町長さんのエピソードもひとつ。

その町長さんは、大接戦の選挙を制したこともあり、近隣の市町村からも一目置かれる偉大な指導者でした(笑)。

 

その方が4期目に入ったとき、新年会も忘年会も、常に町長や副町長が同席するという、いわゆる側近と呼ばれている部署に、私が異動することになりました。

その部署は私にとっては、あまり居心地のいいものではなく、どちらかというと町長運転手の方や、警備担当者の方たちと仲良くなった私は、よくその方たちの愚痴を聞いて過ごしていました。

 

例えば、夜中に公用車で町長をお妾さんの家まで送り、ずっと待機しておくように命ぜられるんだけど、公用車だとわからないように、怪しまれないように、駐車しておかなければならないこと。

そして、朝方に帰ってくるんだけれど、公にできないからという理由で、残業代がもらえないこと。

しかも、町長の奥さんからは、「一体、何時まで連れまわしてるの!」って、怒鳴られてしまう、というような話でした。

その他にも、誰にも言えない危ない夜の話をたくさん聞くことができ、政治家の闇社会を知る良い機会でした。

 

そんな中でも一番面白かったのが、町長が認知症を患い始めたにもかかわらず、任期が終わるまでは、なんとか隠し続けるように、私たちが密命を受けていたときの話です。

 その頃、毎朝のように運転手さんが町長を連れて出かけていました。

いつもどこに行ってるんですか?と聞くと、待ってましたとばかりに、嬉しそうに教えてくれました。

「だれにも言うなよ(笑)。フセイン大統領と首脳会談をするから運転しろって、親分(町長)がきかないから、とりあえず適当に2~3時間車で走って、道に迷ったふりして帰ってきてるんだよ」

とのことでした。

 

結局、その町長さんは最後の最後まで認知症であることを外部に知られることはなく、無事に任期を全うされ、私たちのミッションも成功し、偉大な指導者のまま、その後、町民葬も行われました。

そして案の定、私たちの部署のトップにいた方が、次の町長になりました。

こんな平和な感じの田舎役場です。

 

 

 

認知症の取扱説明書 (SB新書)

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